『福田家 伊豆の踊子の宿』宿泊記ー「ここ知ってる!」と大変興奮!温かい炬燵に入って、のんびりと『伊豆の踊子』を読み、川のせせらぎを耳元で聞きながら、ぐっすりと眠りました。
川端康成『伊豆の踊子』
国内外で有名なこの小説に出てきた旅館がまだ元気に営業を続けておられると聞いて、やってきました。
- お宿での実体験を書きました
- 映画『伊豆の踊子』の撮影に使われたお部屋に宿泊。「ここ知ってる!」と大変興奮しました。屋内風呂は本当に昔のままでタイムスリップしたようでした。
- 記事の最後にはお宿のSNS口コミも!
【到着~チェックイン】風情あるお宿
主人公が歩いて南下した伊豆の山道を、バスに揺られながら南下。
途中で沢山の小さな温泉地を通り過ぎて、湯ケ野で降りました。
バス停の近くで、踊り子が迎えてくれています。
国道沿いを離れ、川の方へ下ると、すぐに宿が見えました。
写真で橋からも見える部屋が、川端康成が実際に宿泊した部屋です。
外には全く人がいませんでしたが、一番人気のお部屋で、既に宿泊客が部屋にいるようでした。
ちなみに、旅館の全体はこんな感じ
中に入って名前を伝えると、すぐに部屋へ案内され、暖房の効いたお部屋で手続きができました。
【お部屋】映画の撮影に使われたお部屋
部屋は、映画の撮影に使われたところを予約しました。
6畳+6畳なので、1人で来た私にとってはかなり広く、最初に通された時は思わず「広い!」と言ってしまったほど。
1人客は受け入れない旅館もある中、こんなに広いお部屋を予約できて、本当に有難い。
古くからある旅館ですが、洗面台、トイレも部屋に設置されているので、とても便利です。
お部屋には踊り子関連の詩も飾られており、部屋のすぐ外には、映画で踊り子を演じた山口百恵さんのサインもありました。
また、布団が敷かれている横の障子を開けると、川を眺めながらくつろぐこともできます。
ここは板張りですし、おそらく川端康成が来た当初は廊下だった場所をドアを設置して部屋の一部とし、机と椅子を配置したのでしょう。昔は障子が部屋の区切りだったのだと思います。
机には『伊豆の踊子』が置かれていて、綺麗な折り鶴が栞代わりに挟んでありました。
時期は1月。窓に近づくと少しひんやりしましたが、川の音と新鮮な空気で、穏やかな気持ちになりました。
踊り子関連のこと
旅館自体も楽しめますが、映画や小説を履修してから行くと、さらに楽しみが増します。
例えば、この写真。映画を見たことのある方は、何か思い出せませんか?
そう、主人公が踊り子のお兄さんに部屋まで案内してもらったあと、帰るお兄さんに向かって部屋からお金を投げたシーン。
立派に植物が生えていますが、初めて窓から下を見た時「ここ知ってる!」と、大変興奮しました。
あんなにも昔の映画なのに、まだ聖地巡礼が出来るなんて、なかなか無いのではないでしょうか。
また、旅館に入ってすぐ横には、伊豆の踊子関連の資料等が展示された部屋もあります。
関連の書籍だけでなく、川端康成の直筆原稿や映画撮影時の写真や俳優さんのサインなどもみられます。
本当に多くの物が惜しげもなく飾られ、小さな博物館のようになっていました。
それ以外にも、太宰治が宿泊し、この旅館で『東京八景』を執筆したよう。
そのお部屋は、現在は宿泊に使われていないので、誰でも覗くことが出来ます。
多くの著名人が訪れた有名な宿。
入口には踊り子関係以外にも、たくさんの人のサインが層になって置かれていました。
【夕食】金目鯛!爽やかなワサビご飯。
さて、部屋でのんびりしたり、踊り子の資料を眺めたりしていると、あっという間に夕食の時間に。
「丁度部屋が余っていたから」と、使っていないお部屋に案内していただきました。
テレビをつけて、他のお客さんも気にせずゆっくり食べられたので、ラッキーでした!
1月はシーズンオフなのだと思います。有名な河津桜の時期だったら、こうは行かないかもしれません。
個室は増設したお部屋のようで、自分の泊まっている古くからある部屋よりもずっと狭いけれども、新しい感じがしました。一般的な旅館の部屋という感じです。
そして夕食がこちら!
「海の幸だけでなく、イノシシなどの山の幸もいただけるのが、伊豆半島という感じがするな」と、バスが辿ってきた山道を思い出しながら考えます。
ほかにも、お刺身、煮つけと運ばれてきて、1人で量に圧倒されてしまいました。
煮つけは金目鯛!伊豆半島の南端に位置する、下田で有名のよう。
そして伊豆の名物と言えば、ワサビ!
これは、わさびご飯としてやってきました。
実は、まだ味覚の幼稚な私。
お寿司屋さんでも「ワサビ抜き」してきたので、今回の旅で食べるつもりはありませんでした。
でも、せっかく運ばれて来たから…
よく見る黄緑のワサビとは違う、少し渋い見た目のワサビを前に、少し食べてみることにしました。
するとびっくり!全然嫌な感じがしません。
爽やかなワサビと言えばよいのでしょうか。なんだかとても新鮮で、ツーンとしていなくて、私でも食べられました。
ぜひ、苦手な方も伊豆では挑戦してみてください!ワサビ概念が広がります。
どれもとてもおいしかった!
いつも1人でご飯と言うと、簡単に、義務的に終えてしまいますが、ゆっくり堪能しました。ゆっくりしすぎてしまった位です。
ごちそうさまでした!
【温泉】異世界のような空間にタイムスリップしたよう
食事を終えて少し休憩したら、楽しみにしていた温泉へ!
まずは、部屋に置いていた浴衣に着替えました。
浴衣が選べる!といった特典のない旅館は、どれも似たような浴衣を提供しているイメージです。
ところが、福田家さんが置いてくださった浴衣はピンク地に赤い靴下がアクセントになって、とても可愛く感じました。
福田家さんには2つ浴場があって、この旅館の特徴・榧風呂と、岩風呂、露天風呂がある浴場。
夜7時から朝6時まで、どちらも入っている時は「使用中」と札をかけるので、誰でも貸切にできてしまいます。
まずは榧風呂から。
ドアを開けて階段の下を覗いた瞬間「わあ!」と声を挙げてしまいました。
小ぶりの浴槽に、レトロなタイル。本当に昔のままで、湯気に覆われて霞む視界もあいまって、タイムスリップしたようでした。
シャワーは、古い榧風呂の横に頑張って設置したという感じで、割と使いにくいのですが、それがまた良い。
異世界のような空間を体感した後は、もうひとつのお風呂へ。
もうひとつは岩風呂と露天風呂があり、榧風呂と比較すると新しい感じがしました。
榧風呂は脱衣所も狭く、シャワーも無理に設置した感じでしたが、こちらは脱衣所も広く、シャワースペースも広々としています。
ただ、どちらもきれいに掃除されていて、特徴が違うだけ、という感じです。
露天風呂は外気温で少しぬるくなっていましたが、岩風呂、榧風呂は丁度良い温度で、とても気持ち良かったです。
ちなみに、翌日も朝風呂に入りました。
チェックアウト後は下田に行って一日中外をうろうろしていましたが、なんだか一日中、体の芯がぽかぽかしていたような気がします。
お風呂からあがると、いつの間にか部屋のお茶が新しいものに変わっていました。
温かい炬燵に入って、のんびりともう一度『伊豆の踊子』を読み、川のせせらぎを耳元で聞きながら、ぐっすりと眠りました。
【起床~チェックアウト】小説や映画に登場した共同浴場
朝は起きて少し時間があったので、周辺を散歩しました。
実は旅館の向かいには地元の人だけが入れる、共同浴場があります。
福田家の宿泊客も利用できるのですが、この浴場も、小説や映画に登場したことがあります。
今は当然囲われていますが、昔はお風呂が丸見えだったのでしょうか。
小説には、真っ裸の踊り子が、旅館の榧風呂にいる主人公に向かって、手を振るシーンがあります。
福田家の周辺は、小説が書かれた当時は他にも多くの温泉宿があって賑やかだったようですが、今ではもう福田家さんしかありません。
静かで寒い冬の朝、しばらく川沿いを散歩していると、河津桜が数輪咲いているのを見つけました。
旅館に戻ると、そろそろ朝ご飯の時間に。
旅館らしい、ほっとする朝ご飯。
全部美味しかったのですが、浴衣で1月の朝を散歩してした直後の私には、ぬるく感じられました(笑)。自業自得…
ただ、その後は温泉に入って、体の芯まで温かくなりました。
チェックアウト後、旅館の方が、旅館の前にいた踊り子像とツーショットを撮ってくださいました。
【まとめ】静かに小説の世界に思いを馳せる
昔は周辺にあった、賑やかだった温泉街は既に失われており、どこか寂し気な空気が漂っています。季節が冬だったのもあるかもしれません。
でも、他に気を紛らわすようなものがないからこそ、そこにある温泉や温かいおもてなしにこころがほっとして、静かに小説の世界に思いを馳せることもできました。
当時とは違うけれども、変わらない素敵な何かを感じられた一日でした。
河津温泉 伊豆の踊子の宿 福田家 について
湯ヶ野バス停下車徒歩3分。
日本初ノーベル文学賞作家、川端康成が執筆した小説『伊豆の踊子』の舞台になった情緒ある旅館です。
館内は、映画で使われた場所がそのままで残っており、映画の世界に入り込んだよう。
また映画「伊豆の踊子」の舞台になったお部屋に宿泊できます。
伊豆の踊子主人公が入浴した、昔のままのレトロな榧(かや)風呂は、タイムスリップしたかのような気分が味わえるでしょう。源泉掛け流し温泉の露天風呂も完備。
夕・朝食には、伊豆半島らしい海の幸、山の幸をメインにした純和食のお食事が楽しめます。